花言葉「奇跡のめぐり逢い」
織田大輝 odadaiki57@gmail.com
遺伝子組換え とは
遺伝子組換え植物、通称GM(Genetically Modified)は今や世界中の作物生産において普遍的な存在となっています。その生物が持っていない他生物種の遺伝子を組込むことにより伝統的な育種では作る事が不可能な植物を作り出せることが最大の強みです。これにより除草剤耐性や耐害虫性を付与された作物が今日の食料自給に大きく貢献しています。とはいえこれらは精製された状態でしか一般販売されていないのが現状です。今回の石原産業と千葉大の共同研究による青い胡蝶蘭はGMが苗の状態で販売される極めて先進的な事例となります。これは安全性評価として日本の国内在来近縁種に対する確実な不稔性を検証した結果です。(2021.3承認)
青い遺伝子組換えの前例
先例としては世界初となる花卉の色素GMであるサントリーの青いカーネーション切り花「ムーンダスト」や同社の切り花の青いバラ「アプローズ」が知られています。前者はペチュニアやビオラの遺伝子が用いられ、後者はパンジーの遺伝子が用いられました。このように同じ機能の酵素の遺伝子でも導入種と利用種の組み合わせの相性が重要が重要であり、そこが開発時の関門と言われています。。
青い胡蝶蘭の開発ストーリー
青い胡蝶蘭は、千葉大学の三位正洋教授(現:千葉大学グランドフェロー)および陳東波特任講師と石原産業の共同研究グループにより2005に作出が始まり、カルタヘナ法の審査など含め15年という歳月をかけ、2022に一般販売にこぎつきました。胡蝶蘭はアントシアニンを主要構成色素として持ちますがデルフィニジン型アントシアニンへ変換する酵素F3’5’Hを持っていないため、青い胡蝶蘭の品種は存在してませんでした(注1)。

そこで彼らはツユクサの1種であるアオバナのデルフィニジン合成に必要なF3’5’Hの遺伝子を単離し胡蝶蘭へ導入した結果、2012年に胡蝶蘭とツユクサの相性が良く見事に青色に発色しました。ほかの植物のF3’5’Hでは上手く機能しません。このエピソードから花言葉は「奇跡のめぐり逢い」とされています。ウエディングプロムナードというピンクの品種が導入先として用いられましたが、おそらくその選定も地道なもので、白い胡蝶蘭に導入してしまうとそもそもアントシアニン合成経路が上流で壊れておりF3’5’Hを入れても意味がない事もありますし、シアニジンやぺラルゴニジンが盛んに合成されている品種ではデルフィニジンの青に前者のピンクが混ざってしまい綺麗な青ではなく青紫になる事も考えられます。2012の初開花は奇形でしたが更に世代を重ねて今に至ります。そして2022.3の世界らん展@東京ドームシティにて初公開され、販売が開始、フラワー オブザ イヤーなどの各大会で優秀賞を多数受賞しました。その高貴な色彩と希少性から特別な贈り物として、今後更に活躍されることと思います!

【石原産業 様のHP】 写真はこちらから引用させていただきました。
※詳しくは石原産業様の公式HPをご覧ください。
【千葉大学植物細胞工学研究室 様のHP】こちらの研究室と石原産業の共同研究により開発されました
また作出しても遺伝子組換え植物はすぐには販売できず、生態系への影響などの安全性評価を合格しないと厳重な閉鎖温室内でしか栽培できません。Blue Geneはその厳密な検査に合格し一般的な圃場での生産と販売を国から認可されています。つまりその不稔性から、野外で栽培しても日本の近縁種と交雑して在来種の遺伝子を汚染をするリスクが“無い”と確認されたという事になります。しかしながら強固な予防原則により一部都道府県以下のレベルでの条例により販売が難しい地域もあるようです。また相当な苦労をして開発した品種なのでシャインマスカットの二の舞を踏まないように海外10か国において国際的な特許を申請してあります。なので皆様も繁殖や、譲渡・販売、もちろん海外への持ち出しは絶対になさらないようにお気を付けください。大変重い刑罰の対象となります。
(*1ちなみに原種の変種にPhal.violacea var.Indigo Blueという青いファレノプシスがあります。Phal.violacea var.Indigo Blueはどの様な機構により青く見えるのでしょうか・・個人的に気になります。というのも青く見えるという現象は何もデルフィニジンという青い色素以外にも液胞内PHや金属とのイオン錯体など様々なのです。とはいえこちらは原種なので同時に2輪ほどしか咲かず、同時に15輪以上咲くBlue Geneのような豪華さはありません)

青い花は神秘がありますね!是非皆様も特別な贈り物にBlue Geneを。